お世話になった方々、親しい友人には直接伝えましたが、2008年6月にレコミュニを退職いたしました。このブログでも多少書いた記憶がありますが、しっかりした報告が大変遅くなり、申し訳ございません。自分のためにも綴っておこうと考え、画面に向き合っている次第です。
レコミュニスタッフとして働き始めたのは2006年5月。当時の私は、音楽配信をほとんど利用したことがありませんでした。理由はCDを購入するリスナーだったということ、図書館でCDをかりてくることが多く、聞きたいものがあふれている状態で、配信に手がまわりませんでした。iPodは利用していましたが、その中に入っているのは大半が図書館でかりてきたCDです。インターネットでお金を支払って音楽を買うことはほとんどありませんでした。大きな理由として、ジャケットなどのアートワークを含めたものが音楽で、手にとれる感覚が欲しいという考えがあってCDを選んでいました。今思い返すと、音楽自体、目に見えないものなのに、付随されたものに価値を見出していたように思います。その感覚は今でもありますが、当時はより強く持っていました。 こんな私に音楽配信の仕事が勤まるのか正直とまどいもありましたが、音楽に関われることが嬉しくてスタッフになりました。レコミュニのこともろくに知らず、まさにゼロからのスタート。2006年と言えば、iTunesも浸透しはじめ、音楽配信は急速に広まっている最中でした。とは言っても、CDで満足するリスナーが大半、自分のまわりで配信を積極的に利用している知人も皆無。しかし、いざレコミュニ入って、サイトに登録されている楽曲をのぞいてみると、かなりマニアックなラインナップで、「これは可能性がある!」と興奮した記憶があります。印象の強いアーティストが多く、サイトに色があったからです。 ただ、すでにCDとして出ている曲が登録されていて、もう少し違った展開はできないだろうかと思ったのも事実。「私が配信で買いたい曲は何だろう」と考えたときに出た答え、それは「CDとして販売されていないレア音源」「自主制作でリリースしているインディーズのアーティスト」「テープやレコードなどのアナログ音源」。こうしたものだったら買いたいなと思って実行したのが、「30アーティスト30円」でした(1曲30円で30アーティストを集めて配信する試み)。世間的には無名かもしれないけど、自信をもっておすすめできるアーティスト。彼らは音楽の世界をきっと面白くする。すばらしい音楽をみなさんに届けたい。そのような想いで立案しました。 インターネットのよいところは距離がないところだと思います。今起こっていることを世界中の人が共有できる。どこにいても発信できる。この特性を活かして、東京をはじめとする首都圏だけでなく、中部や関西のアーティストに参加していただきました。提供していただいたのは、ライブ音源や世に出ていない曲、この企画のために新曲を書いてくれた方もいます。本当に嬉しくて、レコミュニスタッフでよかったと感じた瞬間でした。 彼らを呼んで、ライブイベントも行いました。当日はあいにくの台風(傘が一瞬で壊れるほどの暴風)でしたが、それでも200名超のお客様に来場していただき、片付けを終えた帰り道で見上げた雨上がりの朝焼けは美しく、今でも忘れることができません。 2006-2008年時は音楽配信事業を展開する企業が多く、そのほとんどがDRMに縛られたシステムでした。CDの売り上げは落ち込み、音楽配信は伸びると言われていましたが、ユーザビリティを考えればDRMをすべきではないと私は考えます。「ある程度、顔の見えるソーシャルネットワーキングであれば信頼感も生まれるし、安易にコピー配布はできない」という性善説に基づいてレコミュニは事業を展開してきたのです。結果的にレコミュニは配信事業を続けています。DRM配信を展開していた企業の大半は事業撤退していきました。 レコミュニはスタッフも少なく、細々と続けていたから生き残ったのかもしれません。確かにそれは理由の一つですが、「音楽が好きで、探究心を持ち続けている人が関わっている」のが継続の理由だと思います。 これはOTOTOYに改名してから更に感じることができると思います。私が退職する数ヶ月前にレコミュニの新体制が整い、新たなスタートを切りました。高音質や独占配信は今のスタッフがよりよい音楽をリスナーに届けようと知恵をしぼって考えたものです。音楽が好きで好きで仕方ない。このスタッフ達が今のサイトを面白くしているのだと思います。 私はレコミュニから離れて2年が経ちます。その間にスタッフが良質な音楽とテキストやレビューを揃え、ビッグネームのアーティストもOTOTOYでの配信を行うようになってきています。OTOTOYは間違いなく音楽配信の台風の目となって、ミュージックシーンをかき乱してくれるはず。今後もOTOTOYの一リスナーとして期待しています。 「そうだ 京都、行こう。」的な感覚で東京を飛び出したのは2008年6月(もちろん様々な理由があるのですが、半分はこの気持ちで)。こちらではライブやイベントを楽しんでいたものの、音楽活動はこれと言って何もしていませんでした。「何か行動しなければ。」と思って「sweet music」を立ち上げました。フリーペーパーやイベントを自主制作するためのユニットです(個人で行っています)。東京にいた頃は音楽に関わっていましたが、何もしてないと体に悪いと言うか、生活の楽しみが足りなくなるんですね。 京都は音楽が盛んだし、いいところもいっぱいあって、人も優しい。自転車があればぎりぎり市内をまわることができる。手に取れる感覚があって好きです。そして情報量も少ないから、時間が流れるスピードも遅く感じます。そんな京都を伝えることができればと思って「sweet music」を運営しています。現在はメインをウェブに移し、良質なニュースとレビューをみなさんに届けることができれば、という気持ちでブログを書いています。メディアを持つことへのあこがれもあって、誰でも発信できる時代に運良く生まれたのだから、動くしか道はない。今は小さなウェブサイトだけれども継続して、京都と音楽を面白くしていけたらなと思っています。よろしくお願いします。 レコミュニのときは、たくさんの迷惑をかけてきたし、自分に嫌悪感を抱いた方がいたかもしれません。メールマガジンやこのブログを読み返すと、文章は粗雑だし、至らなかった部分は多いと感じます。そんな自分を支えてくれた福岡さんには特に感謝しています。忙しいときに会社に泊まって一緒に仕事をしたのもいい思い出です。他にも片岡さん、廣田さん、穂川さんにはお世話になりました。そして協力してくれたアーティスト、レーベルの方々、メールをくれたユーザーさん、イベントに来て下さった皆様。数えきれないほど多くの方に支えられて仕事をすることができました。コンテンツを面白くできるのは間違いなく「人」です。多くの「人」に会えたことにも心からの感謝を。長くなりましたが本当にありがとうございました。 山田慎
by recommuni
| 2009-10-27 00:00
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